金沢は本当に音楽が似合う、というかロックやジャズ、ブルースに邦楽、ソウルにタンゴやシャンソン、歌謡曲…などジャンルを超えて音楽がいい感じで響く街だ。

ちょっと勘定してみただけでも、音楽を聴きながら気のきいたつまみをあてにして飲める店は常宿の金沢東急ホテルから歩いて行ける範囲で軽く10軒は超えている。

でもオーナーの竹林さんとの出会いと育まれた友情から、100年前の古民家をBARに改装するという話がトントン拍子に進み、僕がプロデュースを引き受け「どうせだったら忘れられない日にしようよ」と昨年の夏至の日にオープンした”Blue Bar 藍”での音楽の鳴り方と居心地の良さは格別だ。

ここ数年ずっと一緒に石川県の魅力を発信するプロジェクトの仕事を一緒にしている宮澤正明さんをはじめ、ミュージシャンや料理人、ホテルのスタッフ…いわば玄人の人たちからもお褒めの言葉を頂き、みんなが音楽と会話を自由に楽しんでいる。

そんなふうにマーティン・スコセッシやフランシスコ・コッポラの撮る映画に出てくるようなBARがあったらいいなという理想の形にどんどん近づいていっている”Blue Bar 藍”でもう50年以上のつきあいになる盟友、森永博志とここでしか出来ないと断言できるイベントを開催することになった。

イベントのタイトルは＜ライブ・シャングリラR18指定＞。80年代の終わりから日本版”エスクアイア”で連載されて”伝説の対談”と言われ、単行本化もされた＜クラブ・シャングリラ＞は”エスクアイア”の休刊後も”団塊パンチ”などに登場して人気を集め、8年前からは”FM cocoro”で＜ラジオ・シャングリラ＞という番組にもなり、これが自分で言うのもおかしいが、完全に”カルト番組”化しているが、その長いシャングリラの歴史の中で、幾度か行われ、毎回sold outになっているイベントが東京でも大阪でもなく、金沢で行われるのである。

それも今回は何と”R18”バージョン。その奔放なトークが評判を呼び、ビートたけしさんが「シャングリラの人たちに会いたい」と言って対談にゲスト参加してくれたり、今は亡きレコード業界の伝説的人物、石坂敬一さんが僕達の掛け合いを”サイケデリックなサインモン＆ガーファンクル”という最高の誉め言葉で評してくれた＜クラブ・シャングリラ＞のライブでの自由奔放さは、自分たちでも思うがかなりのもの。僕等2人が敬愛する吉田健一の名著「金沢」の舞台で21世紀の”夢幻”と”甘い毒”の世界に時を忘れて酔いしれて欲しいと思う。